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    妊娠中の地中海食の摂取は母親の健康転帰に関連

    2019/07/24

    地中海食による母親と胎児の健康転帰への影響を評価した新たな臨床試験により、おもにくるみなどのナッツ類やエクストラバージンオリーブオイルがその鍵を握る食品として注目されました

    カリフォルニアくるみ

    新たな臨床試験により、妊娠中にナッツ類(その半分がくるみ)を毎日摂取し、エクストラバージンオリーブオイルを使用する地中海式食事法を実施した女性は、標準的な妊婦管理を受けた女性と比べて妊娠糖尿病を発症するリスクが35%低く、体重の増加量が平均1.25kg少なかったことが明らかとなりました1

    地中海食には、くるみやエクストラバージンオリーブオイルなどの食品中にみられる良質な不飽和脂肪が豊富に含まれます。2018年に発表され、画期的な研究として注目されたPREDIMED研究landmark EDIMED studyでは、地中海食により、成人における心筋梗塞、脳卒中、および心血管死のリスクが低減することが示されています。なかでも、必須脂肪酸であるオメガ3 脂肪酸のALA(αリノレン酸)を非常に多く含む唯一のナッツであるくるみは、その生理活性成分ゆえに、地中海食の代表的な食品のひとつとして知られています。これまで、地中海食に関するさまざまな研究が行われてきましたが、地中海食が母子の健康を改善する可能性については十分な検討が行われておらず、その点からも今回の研究は特に注目されます。

    ロンドン大学クイーン・メアリー(Queen Mary University of London)およびウォーリック大学(University of Warwick)の研究グループは、肥満や慢性高血圧などのメタボリックシンドロームの危険因子を有する、様々な人種から成る市内在住の妊婦1,252人を対象に、新たな研究を実施しました。参加者は、葉酸とビタミンDの補給に加えて、地中海式食事法を実施する群と、英国の妊婦管理および妊娠中の体重管理に関するガイドライン*に基づき、食事に関する助言を受ける対照群に無作為に割り付けられました。

    地中海式食事法を実施した女性は、ナッツ類(1日30g;くるみ15g、アーモンド 7.5g、ヘーゼルナッツ 7.5g)を毎日摂取し、食用油としてエクストラバージンオリーブオイルを主に使用しました(週に0.5L)。地中海食は、果物や野菜、非精製穀物、マメ科植物のほか、魚を中~多量、鶏肉および乳製品は少~中量摂取する一方で、赤身肉や加工肉の摂取は少なく、加糖飲料、ファストフード、および動物油脂を多く含む食品は避けるのが特徴です。

    参加者らは、食事内容が守れるよう、また、食事内容が文化的背景を考慮したものであることを確認するため、妊娠18週、20週、28週の時点で食事に関する助言を受けました。食事内容が守れているかどうかは参加者の自己申告に基づいて評価を行ったため、ヒューマンエラーが含まれる可能性に留意する必要があります。

    今回の研究では、高血圧や子癇前症*、死産、胎児発育遅延、新生児集中治療室への入院など、その他の妊娠合併症に対する影響も評価しましたが、地中海食との有意な関係は認められませんでした。

    母親の4人に1人は妊娠前に肥満や慢性高血圧、脂質値の上昇を来しており、妊娠合併症や、母子の長期にわたる糖尿病および心血管合併症リスクにつながる可能性があります2,3,4。地中海食は、そのほかにも認知機能の改善にも関連しており、今回の臨床試験の結果は、地中海食の健康効果を支持するものです。

    今回の臨床試験の結果で注目された妊娠糖尿病の日本における発症頻度は10%前後といわれており、増加傾向にあります。これは、2010年の診断基準の変更*の影響もありますが、妊婦の晩産化や肥満の増加傾向などが要因であると考えられています。妊婦の栄養管理、妊娠糖尿病の専門医である愛媛大学大学院医学系研究科産婦人科の杉山隆教授は、「非妊婦に対する地中海食は心筋梗塞や脳卒中、心血管死のリスクを低くすることが知られており、妊娠中の地中海食摂取が妊娠糖尿病発症を低くすることも最近報告されています。今回の無作為化比較試験の結果は、妊娠中のくるみ主体のナッツ類の摂取とエクストラバージンオリーブオイルを使用する地中海式食事法は、周産期的(胎児・新生児)視点より安全かつ母体にとっても有用な食事であることが示された点で意義があります。」と語っています。

    この研究では、カリフォルニア くるみ協会(CWC)がくるみを提供しました。CWCは、くるみくるみの摂取と関連した固有の健康効果に関する知識を提供し、理解の促進を図る目的で、25年以上にわたりくるみと健康に関する研究を支援してきました。CWCは、さまざまなプロジェクトに対し、資金および(または)くるみを提供していますが、すべての研究は研究者らが独立して実施しており、試験デザイン、結果の解釈、エビデンスに基づく結論の提示は研究者らによるものです。CWCは、企業が資金提供した研究の科学的公正性に努めています。

    *ICE Guidance. Weight management before, during and after pregnancy
    https://www.nice.org.uk/guidance/ph27
    *子癇前症:通常、妊娠後期に発症する重篤な妊娠合併症です。血圧上昇と尿蛋白を来し(妊娠高血圧腎症)、治療せずにいるとけいれん発作(子癇)のリスクが高まり、母子ともに生命が危ぶまれる可能性があります。
    *全員に75gぶどう糖負荷試験を行った場合の頻度です。スクリーニング陽性者のみぶどう糖負荷試験をしたときは、若干少なく7〜9%の頻度になります。日本糖尿病・妊娠学会「糖尿病と妊娠に関するQ&A」
    https://dm-net.co.jp/jsdp/qa/c/q01/

     

    • いわしのくるみパン粉ロースト

      参考レシピ:いわしのくるみパン粉ロースト

    • カリフォルニアくるみのタイ風サラダ

      参考レシピ:カリフォルニアくるみのタイ風サラダ

    参考文献:
    1H. Al Wattar B, Dodds J, Placzek A, Beresford L, Spyreli E, Moore A, et al. (2019) Mediterranean-style diet in pregnant women with metabolic risk factors (ESTEEM): A pragmatic multicentre randomised trial. PLoS Med 16(7): e1002857.
    https://doi.org/10.1371/journal.pmed.1002857
    2Galtier-Dereure F, Boegner C, Bringer J. Obesity and pregnancy: complications and cost. Am J Clin Nutr. 2000;71(5):1242s–1248s.
    3 The Public Health England Obesity website [Internet]. Available from:
    https://khub.net/c/document_library/get_file?uuid=a5768682-fb3d-4fda-ab4a-937a8d80f855&groupId=31798783
    4 Osterman MJK, Martin JA, Curtin SC, et al. Newly released data from the revised U.S. birth certificate, 2011. National Vital Statistics Report 62(4), 2013. Hyattsville, MD: National Center for Health Statistics.